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花・緑情報

葵祭にちなんで〜フタバアオイ〜

2016.05.15 更新







 今日5月15日は古都京都の伝統行事葵(あおい)祭が行われます。京都三大祭の一つで,1500年近い伝統を持つ葵祭の名前の由来であり,シンボル的な存在なのがフタバアオイです。今日は祭りの日にちなんで,ロックガーデンで目立たずひっそりと花を咲かせているフタバアオイをご紹介します。

 フタバアオイはウマノスズクサ科カンアオイ属の小型多年生草本です。日本固有種であり,福島県以南から九州にかけての森林の暗い林床に生育します。

 ハート形の葉を2枚つけるのが特徴で,それが名前の由来(フタバ=二葉)になっています。(写真1)

 一見花がついていないように見えますが,葉柄の基部から花柄が出て,葉の下に隠れるようにして咲いています。(写真2)この花は花弁がなく,花弁状に発達した淡い紫のガク片がお椀のような形になっています。(写真3)

 この花は匂いも蜜腺もなく下向きに咲いており,どのようにして受粉するのか疑問に思われます。これについては,地表を行く虫などが媒介するという説もありますが定かではありません。

 冬には葉が枯れ地上部にはなにもなくなります。しかし地下茎が生きており春には葉を広げます。(写真4=3/31撮影)この時にはすでに花のつぼみもできていました。(写真5=同日)

 葵といえば江戸の将軍家である徳川家の家紋である三つ葉葵がよく知られていますが,ミツバアオイという植物はなく,フタバアオイを基にデザインされたのが三つ葉葵です。

 葵祭ではこのフタバアオイの葉とカツラの枝葉(写真6)を絡ませた飾り(葵桂)をつけ,平安の装束に身を包んだ行列が京都御所から下賀茂神社までを練り歩きます。アオイは古語で「あふひ」と呼ばれましたが,「あふ」は逢う,「ひ」は神霊という意味があるそうです。葵祭と深く結びついたフタバアオイは古都に初夏の訪れを告げます。