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花・緑情報

水辺の華やぎ〜カキツバタ・アヤメ・ヒメコウホネ〜

2016.05.14 更新









 今日も青空が広がっています。強い日差しの下気温が上がり,森林植物園でも夏日になりました。こんな日は爽やかな風が吹き渡る長谷池周辺の散策がお奨めです。長谷池では今カキツバタの見頃が近づき,ヒメコウホネも可愛い花を咲かせています。今日はこの水辺に彩りを添える花をご紹介します。

 「唐衣 着つつ慣れにし 妻しあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思う」(在原業平 古今集)

 これはカキツバタが詠み込まれた折句です。句頭をつなげるとカキツバタになります。(写真1)

 カキツバタはアヤメ科アヤメ属の湿地性多年草で,日本各地のほか東アジアにも広く分布しています。

 茎先に青紫の花を2〜3輪つけますが,6枚ある花被片のうち内側3枚の花被片は細くて立ち上がり,外側3枚は垂れ下がっています。(写真2)ただ園芸品種も多種あり,花被片が白いものは全てが垂れ下がった外花被片になっています。(写真3)長谷池では他にも赤紫の種も見られます。(写真4)

 「いずれがアヤメかカキツバタ」という言葉があります。これには優劣がつけ難いという意味,そして見分けがつけにくいという2つの意味があります。そのアヤメも長谷池近くでご覧いただけます。確かに花は見分けにくいかもしれませんが,アヤメは湿地性ではなく花壇でも育ちます。また花弁の根元にある模様が網目模様で(写真5)白い筋のような模様のカキツバタ(写真6)とは見比べていただければすぐに違いをお分かりいただけます。

 カキツバタは古くはカキツハタと清音で呼ばれていました。古来花の汁を擦り付けて衣を染める染料にしていたところから「掻付花(書付花)」と呼ばれ,それが訛ってカキツハタになったというのが名前の由来のようです。ちなみにアヤメは前述の網目模様から文目(アヤメ)と呼ばれるようになったそうです。

 そのカキツバタから少し先の池の中でお椀形の花を咲かせているのがヒメコウホネです。(写真7)

 スイレン科コウホネ属の浮葉性多年草で,日本固有種であり,中部以西の池沼などに自生します。

 茎の先から一輪の花を咲かせますが,花弁のように見える部分はガク片で,その中にたくさんの花弁が隠れています。(写真8)

 コウホネと比べて小型であることからヒメ(姫)コウホネと呼ばれますが,コウホネ(河骨)の名前は白い根茎が骨のように見えることに由来しています。

 長谷池ではまだこれからスイレンやアサザといった水生植物が次々と咲き,夏を涼やかにそして華やかに彩ります。同じく旬を迎えるアジサイの仲間とともにお楽しみください。