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花・緑情報

ナンジャモンジャノキ〜ヒトツバタゴ〜

2016.05.11 更新







 降り続いた雨が上がりました。明日からの数日は五月晴れになりそうです。その青い空によく映える白い花がいくつか咲き始めました。その一つがナンジャモンジャノキです。(写真1・2)といってもこれは正式な名前ではなく,見慣れない立派な樹木や変わった植物に対して人々がつけたいわゆる愛称で特定の種を指すものではありません。ただ各地でこう呼ばれる植物はヒトツバタゴである場合が多く,今本園で花を咲かせているのも同種です。

 ヒトツバタゴはモクセイ科ヒトツバタゴ属の落葉高木で,中国や朝鮮半島にも分布していますが,日本では対馬・木曽川流域・愛知などに隔離分布する珍しい分布形態の植物です。

 枝先に円錐の花序を出し,花柄の先に白い花をつけます。(写真3)筒状の花は深く4つに裂けています。花弁は細く白糸を重ねたように見えます。オシベ・メシベはこの筒状部分に隠れているため表からは見えません。(写真4)

 このヒトツバタゴは雌雄異株といわれていますが,正確にはオシベを持つ雄花とオシベ・メシベを持つ両性花があるようです。本園で花をつけているものは,花冠を割いて確認するとメシベは見当たらず,黄色い葯のオシベだけが見られたため雄株と思われます。(写真5)

 自生地の一つである対馬の上対馬町では,入江を囲む斜面に多く,花期になると海面を真っ白に照らし出すため,地元では「ウミテラシ」と呼ばれているそうです。なおこの自生地は天然記念物に指定されています。(対馬新聞社 対馬ポータルサイトより)

 この名前は本種に似たトネリコ(別名タゴ)が複葉であるのに対し,本種が単葉(写真6)であるために「一つ葉タゴ」と名付けられました。

 ヒトツバタゴは森林展示館から長谷池に向かう園路沿いでご覧いただけます。高木で高い所に花を咲かせているため,見上げてご覧いただき,雪のような花をお楽しみください。