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花・緑情報

ギンリョウソウ

2016.05.06 更新







 GWも終盤となった合間一日は雨模様です。初夏の柔らかな雨に濡れる緑は一段と鮮やかです。ほんのひと月ほど前,まだ芽生えたばかりのだったカツラのハート形の葉もすっかり緑を深め,薄日を映し出しています。(写真1)

 つつじ・しゃくなげもコバノミツバツツジ・ツクシシャクナゲからモチツツジやヒラドツツジそしてダイセキナンへと主役を変えてきていますが,つつじ園ではつつじ以外にも足元でひっそりと咲く花があります。それがギンリョウソウです。(写真2)

 ギンリョウソウは一見すると花には見えませんが,ツツジ科(分類法によっては別科)ギンリョウソウ属に分類される被子植物です。種子植物ではありますが光合成は行わず,菌類から栄養を取り入れています。正確には「菌類が共生する樹木が,光合成で作り出した有機物を菌類経由で受け取っている」ということだそうです。

 花は茎の先にうつむき加減に咲き,全体は円筒形になっています。(写真3)花弁(花被片)は3〜5枚が重なっており,鱗片状のガク片が1〜3枚ついています。(写真4)葉緑素がなく葉には見えませんが,鱗片葉と呼ばれる退化した葉が茎を覆っています。

 花の中を覗きこむと,青紫色とその周りに黄色が見えます。(写真5)この青紫がメシベの柱頭で,黄色はオシベの葯(やく)です。この花にはマルハナバチなどが訪れて受粉に寄与します。

 ギンリョウソウ(銀竜草)の名前は,その姿を白銀の竜に見立てたことに由来しています。薄暗い林床に咲くことからユウレイタケの別名もありますが,前述のようにキノコの仲間ではありません。

 近縁種にアキノギンリョウソウがあり(写真6=2015/9/4撮影)姿はそっくりですが,花期は秋,実のでき方も違い全くの同種ではありません。

 決して華やかではありませんが,不思議な雰囲気を醸し出す花ギンリョウソウ。まだご覧になったことがない方はぜひ一度ご覧ください。