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花・緑情報

ホオノキ

2016.05.03 更新









 そろそろ初夏の様相を呈するようになり,日々緑がその色を深めていく中,野生のフジの柔らかな藤色が目に鮮やかです。今年はとりわけ花付きもよく,香りの道やリガの森の林縁で華やかな初夏の色をご覧いただけます。(写真1)

 その香りの道でフジに負けない華やかな花を咲かせているのがホオノキです。(写真2)

 ホオノキはモクレン科モクレン属の落葉高木で,北海道から九州にかけての山地に自生します。日本以外では朝鮮半島や中国に分布します。

 枝先につけるクリーム色の花は直径が20cm近くにもなる大きな花で,甘く強い香りを放ちます。花被片はらせん状に10枚前後つき,3枚のガク状片は少し赤みを帯びた淡い緑で,垂れ下がるようについています。(写真3)中央部にはメシベの花柱があり,その周囲には基部が赤く葯(やく)にあたる部分が乳白色のオシベが取り巻いています。花柱には多数のメシベがついていますが,開花直後のみ開いているため,(雌性期)それを目にすることは極めてまれです。(低い位置に花があれば,十分開ききっていない花を覗き込んで見ることができるかもしれません)メシベが閉じた後にオシベが開き雄性期を迎えます。(写真4)そしてオシベもすぐに落ちてしまうため,花にはメシベの花柱だけが残っているのを見ることが多いようです。

 花だけでなく長楕円形の葉も大変大きく,20〜50cmぐらいになり,日本産の広葉樹では最大のものせす。この葉は円形に展開するのが特徴です。(写真5)この大きな葉が周辺に緑陰をつくっています。(写真6)この葉は古代には食物を盛る器として用いられ,「ホオノキ(朴の木)」の名前も食物を包んだこと(包=ホウ)に由来するということです。

 今でもこの葉は器として利用されており,この葉の上に味噌を乗せて焼いた朴葉味噌は飛騨の郷土料理として知られています。朴葉味噌に使われる葉は,落葉した葉を干したものです。

 多数あるメシベは一つ一つが独立して袋果という果実になります。そして袋果が密集して松ぼっくりのような集合果になります。(写真7=2015/8/15撮影)この実を求めて野鳥がやってくることもあります。(写真7=2014/9/23 アオゲラ)

 ホオノキは20mを超える高木で花が咲いても分かりにくいのですが,香りの道は園路が木の根元よりも高い位置にあるため,少し見上げていただければ花をご覧いただけます。その甘い香りまでは難しいでしょうが艶やかな花は十分ご堪能いただけます。