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花・緑情報

香りの道の白い花〜ヒメウツギ・コバノガマズミ〜

2016.05.01 更新









 5月皐月(さつき)を迎えました。まさに今日は五月晴れです。そして今日は八十八夜にあたります。雑節の一つで,立春から数えて八十八日目,春から夏に移る節目として様々な農事の目安とされています。特にこの日に摘んだお茶は古来不老長寿の縁起物として珍重されてきました。唱歌「茶摘み」でも「夏も近づく八十八夜・・」と歌われています。本園の薬樹園でも瑞々しい新芽が顔を出しています。縁起物の画像をご覧ください。(写真1)

 さて新緑の美しい園内でも,とりわけ広葉樹が多い香りの道周辺では近景・遠景で新緑をご覧いただけます。そして柔らかな緑に映える白い花も咲いています。その一つがヒメウツギです。(写真2)

 アジサイ科ウツギ属の落葉低木で,ウノハナの別名を持つウツギの近縁種です。日本固有種の植物で,関東以西の本州・四国・九州に分布しています。

 枝先に円錐花序をだし,やや下向きに多くの花をつけます。(写真3)5枚の花弁を持ち,10本あるオシベは長さが不ぞろいで広がっています。(写真4)

 初夏を代表する花であるウツギと花はよく似ていますが,樹高はヒメウツギの方が低く,そのためヒメ(姫)の名を冠しています。ウツギの花期は平均してヒメウツギよりひと月ほど後になります。

 もう一つ,今香りの道で点々と見られる白い花がコバノガマズミです。(写真5)

 レンプクソウ科(以前はスイカズラ科)ガマズミ属の落葉小高木で,福島県以西の本州・四国・九州の山地に自生します。

 花序は径が5cmぐらいで横に広がっており,白い小さな花を密につけます。(写真6)一つ一つの花は先が5つに裂け,その裂片が平たく開いているので5弁花に見えます。5本のオシベは花冠より長く突き出ています。(写真7)

 他のガマズミ属植物同様,秋には美しい赤い実をたくさんつけます。(写真8=2015/9/28撮影)酸味は強いものの食べられるそうです。

 コバノ(小葉の)ガマズミの名前は,ガマズミやミヤマガマズミなど他のガマズミ属植物に比べて葉が小さいことに由来しています。ガマズミについては諸説ありますが,この赤い実が関係しているようで,「赫つ実(かがつみ)=赤い果実」が転訛した,この実を赤い染料に使ったための「染め」から転訛したなどがその例です。

 香りの道では夏鳥のオオルリやキビタキの美しいさえずりも聞こえてきます。美しい緑や花そして初夏の爽やかな風とともに五感で季節を味わっていただければと思います。