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花・緑情報

アケビの仲間

2016.04.26 更新











 新緑に彩られた木々の間で柔らかな薄紫が目立つようになってきました。そろそろ見頃となっているフジの花です。(写真1=香りの道)今日は同じつる性植物で花盛りを迎えているアケビの仲間の花をご紹介します。

 アケビの仲間の実はほんのりとした甘さを持ち,かつては山遊びに興じる子どもたちにとっての恰好のおやつでした。(写真2=2015/9/14撮影)今は栽培されたものが売られていますが,食べた経験のある方々にとってはなつかしい味かもしれません。そのアケビの仲間を代表するのがアケビです。

 アケビ科アケビ属のつる性低木で,本州から九州にかけての山野に自生します。

 雌雄同株の異花で,雄花はミカンの房のように丸まったオシベがついています。(写真3)雌花は雄花よりも大きく,バナナのような形のメシベが放射状についています。(写真4)いずれも紫のオシベ・メシベと白い花弁のように見えるガク片がよく映える美しい花です。この葉は5枚の小葉が手のひら状につく複葉です。(写真5)

 アケビが白いガク片を持つのに対して,濃い赤紫のガク片を持っているのがミツバアケビです。(写真6)ガク片の色以外にも,小葉が3枚で鋸歯(きょし)がある点が違っており,名前の由来にもなっています。また雄花が枝先にまとまってついており,ガク片が小さくオシベだけが目だっています。(写真7)

 アケビとミツバアケビを比べると,ミツバアケビの方が乾燥などのストレスに強いため広い範囲に分布するといわれています。ただ本園ではアケビの方が多いように思われます。そしてこれらの雑種であるゴヨウアケビと呼ばれるものも園内で見られます。(写真8)この花のガク片は紫でミツバアケビに似ています。そして小葉は5枚でアケビと同じです。ただよく見るとこの葉には鋸歯があり,それはミツバアケビから受け継いだようです。

 アケビの名前の由来は,実が熟すと果皮が割れることから「開け実(あけみ)」と呼ばれ,それが訛ったものというのが定説です。

 そしてもう一種のアケビ科植物がムベです。(写真9)他のアケビ類が落葉するのに対し,ムベは常緑で,トキワアケビの別名もあります。花の感じも他のアケビ類とは少し違っています。他のアケビ同様雌雄異花ですが,オシベ・メシベいずれを持つかだけの違いで花の形は変わりません。(写真10=雄花)

  この実もほのかな甘みがあり食べられますが,実が小さいため食用としてはあまり流通していないようです。ただこの実は「伝説の霊果」や「不老長寿の実」と呼ばれています。それは元気な老夫婦にその秘訣を尋ねた天智天皇に,老夫婦が「この実を食べているからです。」といってムベの実を献上し,それを食された天皇が「むべなるかな。(もっともなことである)」とおっしゃった・・という故事に基いています。それがムベの名前の由来にもなっています。ちなみに老夫婦が住んでいた湖東の町ではそれ以来皇室にムベの実を献上するようになったそうで,延喜式にも記録されています。

 これらアケビの仲間は自生種ですので園内各所でご覧いただけます。ブリスベーンの森の林縁などでは多くの花と出会えるはずです。