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花・緑情報

遅咲きのサクラ〜カスミザクラ・ウワミズザクラ〜

2016.04.22 更新








 マメザクラから始まった本園のサクラもヤマザクラやオオシマザクラがほとんど葉桜となり,新緑の季節を迎えています。香りの道や天津の森から望む山々も色とりどりの新緑に包まれています。その綾なす柔らかな新緑の中に浮かぶように咲く白に近い淡いピンクの花があります。(写真1・2)これは遅咲きのサクラ,カスミザクラです。

 野生のヤマザクラの一種で,ヤマザクラとは入れ替わるように咲きます。日本全国の山地に自生し,山々に点々と霞(かすみ)がかかったように咲くことからカスミザクラと呼ばれています。

 花はヤマザクラに似ていますが,ヤマザクラよりはやや小さく,わずかに赤を帯びた白色の花弁を5枚持っています。その花弁は丸い形で先端が切れ込んでおり,オシベは40本あります。(写真3)ヤマザクラは個別変異はあるものの,若葉は赤っぽい色が多いのですが,カスミザクラの葉は緑が強くなっています。また写真ではお分かりいただきにくいのですが,花柄や葉柄に細かい毛が生えています。そのためケ(毛)ヤマザクラと呼ばれることもあります。

 そしてもう一つのサクラがウワミズザクラです。(写真4)野生のサクラの一種ですが,穂状に花が咲く様子はサクラには見えません。「野生種のサクラ」として挙げられるもののなかに,このウワミズザクラやイヌザクラはいれられていないことが多いようです。それでも一つ一つの花はバラ科植物らしい5弁花で,たくさんあって花からつき出すように出ているオシベがよく目だっています。(写真5)

 近縁のイヌザクラも非常によく似た花をつけますが,花序をつける枝に葉があるものがウワミズザクラで(写真6)イヌザクラはここには葉はありません。

 ウワミズザクラは漢字では「上溝桜」と書きますが,これは古い時代にこの木の材の表面に溝を彫り,亀の甲羅(または鹿の肩甲骨)を焼いて占いに使用したことに由来する・・というのが通説です。古事記に波波迦(ははか)の名前で出てくるのがこのウワミズザクラといわれています。

 カスミザクラ・ウワミズザクラとも園内各所でご覧いただけます。ウワミズザクラはさくら園近辺に多く,カスミザクラはあじさい園の近くで眼前にご覧いただけます。(写真7)