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花・緑情報

春色の花〜ノウルシ〜(サクラ情報)

2016.04.08 更新








 昨日の強風と雨で多くのサクラがその華やかなひと時を終えました。舞い散るサクラ吹雪が街をピンクに染めています。

 本園のサクラは市街地より少し遅れて咲き出したため,強風に負けず見頃を保っています。ソメイヨシノやベニシダレはさすがに少し散ったものの美しい姿を留めています。まだ満開前だったオオシマザクラにとっては花起こしの雨だったようで,ちょうど見頃となっています。(写真1)また八重のベニシダレはまだ開花途中で,これからがお楽しみいただける時です。(写真2)この土日はお天気もよさそうです。どうぞ二度目のお花見をお楽しみください。

 そのさくら園では足元にも春色の花が咲いています。柔らかな緑と黄色のパステルカラーが美しい植物はノウルシです。(写真3)

 トウダイグサ科トウダイグサ属の多年草で,川岸などの湿地に自生する日本固有種の植物です。地下に太い根茎を持ち群生しますが,近年生育環境が変化することで存在基盤がぜい弱になり,準絶滅危惧種に指定されるほど減少しています。

 緑の葉の上に一つの黄色い花が乗っているようにも見えるこの黄色い部分は複雑なつくりになっています。(写真4)それはトウダイグサ属特有の「杯状花序」というつくりです。

 その構造はまず茎の先に5枚の葉が散状につき,その葉腋から5本の枝を散形に出しています。それぞれの枝の先に3枚の苞葉がつき,そこから出た細枝に2枚の苞葉がつきます。そしてその先に雄花か雌花をつけます。雄花・雌花ともに花弁もがく片も持たず,オシベ・メシベだけです。なお花序の中心にある花は不稔性で,花としての機能は持っていません。(写真6=オシベ 7=メシベ)雌花(メシベ)が成熟した後に雄花(オシベ)が開くようになっており,メシベには丸い子房がついています。

 この不思議なつくりの花を持つノウルシは漆塗りのウルシとの類縁関係はなく,茎を傷つけると出てくる乳状の液にかぶれる成分が含まれていることから野原のウルシ=ノウルシと呼ばれています。

 桜色の花びらがはらはらと舞い落ちる中,これまた春を感じさせる柔らかな色のノウルシの花をお楽しみいただき,春の深まりをお感じください。