果樹の花〜スモモ・ナシ・モモ〜
2016.04.07 更新
穏やかなお花見日和だった昨日から一転,春の嵐のような雨風の一日となりました。満開のサクラにとっては花散らしの雨です。ただ新緑を展開しつつある木々にとっては芽起こしの雨で,雨を待っていたアジサイにとっても恵みの雨です。(写真1)
さて,生命感溢れ花開く季節である春は,多くの果樹つまり果物を実らせる木も花の季節です。今日は園内で咲く果樹の花をいくつかご紹介します。
雨に煙る薬樹園で,白い花が浮かび上がるように咲いているのがスモモです。(写真2)
「吾が園の 李(すもも)の花か庭に散る はだれのいまだ残りたるかも」(大伴家持 万葉集)
この歌に詠まれているように,万葉の昔から人々に桃李として親しまれた春の花の一つがスモモです。バラ科サクラ属の落葉小高木で中国を原産地としています。万葉集に名前が残るように古い時代に日本に渡来しています。一説には弥生時代の伝来ともいわれています。
オシベが目立つ5弁の花は,葉の付け根から2つから3つずつ密生して咲いています。(写真3・4)
その実はプラムとかプルーンと呼ばれますが,日本のスモモをプラム,コーカサスを原産地とする西洋スモモをプルーンと呼ぶことが多いようです。(生のものをプラム,乾燥したものをプルーンと呼ぶともいわれています)
その名前は,スモモはモモに比べて酸味が強いことから「酢桃」と呼ばれるようになり,それを漢名の李の読みにあてたことに由来します。
そして桃李のもう一つ,モモも花を咲かせています。5弁の可愛らしい花はまさに桃色です。(写真5・6)前にご紹介したハナモモの開花から1〜2週間,3月3日の桃の節句(旧暦)は今の暦で(今年の場合)4月9日とまさに暦通りの開花です。
モモもスモモ同様中国を原産地としていますが,シルクロードを通って早い時代に世界中に広まっており,日本への渡来もスモモよりも早い縄文時代の前期ともいわれています。
スモモとよく似た花を咲かせているのがナシです。(写真7)ナシもバラ科植物で,ナシ属に分類されます。日本で「梨」と呼ぶものは和ナシを指し,日本の中部以南と中国・朝鮮半島に自生するヤマナシを基本種とした栽培品種群をこう呼びます。
花だけみるとスモモとの区別は難しいのですが,花が咲きに咲くスモモに対し,ナシは葉と花がほぼ同時に開きます。(写真8・9)
ナシの名前の由来は諸説があり,果肉が白いことから「中白」となり,それがナシになったという説,風があたると実らないことから「風無し」で,それがナシになったとする説,果肉の中心が酸っぱいことからの「中酸=なす」でそれが転じたとする説など枚挙にいとまがありません。
果樹にはあてはまりませんが,ナシ属の野生種であるミチノクマメナシも美しい花を咲かせています。(写真10)メタセコイア並木の裏手と少し目立たない場所にありますが合わせてご覧ください。
なおナシの花はさくら園で,モモの花は天津の森でご覧いただけます。