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花・緑情報

桜便り その2〜ヤマザクラ・ベニシダレ・マメザクラ〜

2016.04.05 更新









 うららかな春空の下,山々は少しずつその装いを変えつつあります。まさに「山笑う」季節です。その山肌を部分的に淡いピンクで染めているのは多くがヤマザクラだと思われます。(写真1)

 ヤマザクラは日本の野生サクラの代表種で,山地に広く自生し,古くから人々に親しまれてきました。今は花見といえばソメイヨシノが主になりますが,明治期以前はヤマザクラが中心でした。在原業平の歌「世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」(古今集)の桜はヤマザクラであったと思われます。

 淡いピンクの花はエドヒガンなどと似ていますが,葉と花を同時に展開する点がその特徴となっています。(写真3)オオシマザクラも同様ですが,葉の色が茶色っぽい色であることが多く,その点で区別できます。(写真4)ただヤマザクラの葉の色は変異が大きく,オオシマザクラと同じような緑の葉をつけることもあります。

 秋田角館の伝統工芸品である樺(かば)細工は,このヤマザクラをはじめとするオオシマザクラやカスミザクラなどのいわゆるヤマザクラ類の樹皮を用いたものです。

 香りの道を歩くとヤマザクラやオオシマザクラの花が目に飛び込んできますが,さくら園では鮮やかなベニシダレが目を引きます。(写真5)

 エドヒガンの変種でエドヒガンとはほぼ同じ形質を持っていますが,枝垂れた枝と濃い花の色が特徴です。(写真6)推定樹齢1000年を超え,日本の三大巨桜の一つに挙げられる福島県三春の滝桜はこのベニシダレです。

 さくら園では一番早く咲き出した(寒緋サクラを除いて)マメザクラが満開になっています。(写真7)

  サクラの野生種の一つで,富士山近辺や箱根近辺に自生しており,フジザクラやハコネザクラとも呼ばれます。

 他の種に比べて樹高が大きくならず,花も小さいためマメ(豆)ザクラと呼ばれています。大きくならなくても花を咲かせるため,庭木や盆栽樹としてよく用いられます。花は下向きにつき,花弁の内側がやや濃い赤紫色になっています。(写真8)

 森林植物園では昨日ご紹介したサクラも含めて多くのサクラが見頃を迎えています。これらのサクラは市街地よりも遅れて開花した分長くお楽しみいただけるはずです。またカスミザクラやウワミズザクラなどこれから花期を迎えるサクラも控えています。森林植物園で爛漫の春をお楽しみください。