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森林植物園のいま(バックナンバー)

ヤブツバキとその仲間

2017.03.11 更新







サザンカはそろそろ花の時期を終えようとしていますが,入れ替わるように本格的に咲き出してきたのがヤブツバキです。(写真1・2)ツバキには寒椿と呼ばれるものもあり,冬のイメージが強い植物です。しかし木偏に春と書くように,秋から冬のサザンカに対して春の花です。ちなみに寒椿はヤブツバキとサザンカの交雑種といわれ,花びらが一枚ずつ落ちていくところなどサザンカに近いようです。

 ヤブツバキはツバキ科ツバキ属の常緑小高木で,学名のCamellia japonicaが示すように日本特産の植物です。

 漏斗型の花は花弁が5枚で,多数ありオシベがよく目だっています。オシベの中心には柱頭が3裂したメシベがあります。(写真3)

 ヤブツバキは古事記に名前が見えるとともに,万葉集にも多く詠み込まれています。そのように古くから親しまれてきた植物だけに園芸品種も多くつくられてきました。それらは好んで茶席に用いられてきました。その一つに「太郎冠者」と呼ばれる品種があります。(写真4)淡いピンクの一重咲きで,ヤブツバキより小ぶりの花をつけます。この種はヤブツバキと中国産のツバキが基になっているといわれています。この名前の由来は定かではありませんが,別名の「有楽椿(うらくつばき)」は,織田信長の弟で茶人として知られる織田有楽斎が好んだことに由来するようです。またこの種を基につくられたといわれるアカワビスケ(写真5)とシロワビスケ(写真6)も太郎冠者の近くに咲いています。いずれも微妙な色合いとはかなげな風情が茶席に似合う花です。ワビスケ(侘助)の名前は人名からきているという説もありますが,「侘び数寄」が転じたという説もあります。いずれも茶事が関係しており,この種と茶との繋がりがうかがい知れます。

 これらの品種は見本園でご覧いただけます。ひっそりと咲く花から侘び寂びの風情をお感じいただければと思います。

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