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花・緑情報

カリン

2016.04.18 更新







 新緑がまぶしい香りの道で,優しい色,そして可愛らしい形の花を咲かせているのがカリンです。(写真1)今日は,その実が咳止めや喉の炎症を抑えるのど飴に利用されることで知られるカリンをご紹介します。

 カリンはバラ科カリン属(以前はボケ属)の落葉小高木で,中国を原産地としています。日本への渡来ははっきりとはしていませんが,およそ1100年前に弘法大師が唐から持ち帰ったともいわれています。

 花はバラ科植物らしい5弁花で,枝先に一つずつチューリップのようなお椀形の花をつけます。(写真2)オシベは20本以上とたくさんあり,メシベは5本です。(写真3)淡いピンクの繊細な色の花は,つぼみの時も可愛らしい形でもっと濃い鮮やかな赤い色をしています。(写真4=4/4撮影)そしてこの可憐な花から想像しにくいのが,ごつごつとしていて大きなその実です。(写真5=2015/12/7撮影)上記のようにこの実はのど飴などの民間療法に利用されてきました。またお酒に漬け込んで果実酒にしたり,切って砂糖漬けにしたり,ジャムにしたりと多用途に利用されています。ただ堅くて渋いため生食には向きません。

 木の成長に伴い,樹皮がうろこ状に剥がれて滑らかな黄褐色の木肌が露わになりますが,(写真6)これもなかなか美しいものです。この木肌はリョウブやカゴノキに似ています。この材は堅くて粘り強く美しいため家具や彫刻などに利用されています。

 「カリン」の名前はその木目がフタバガキ科のカリン(花櫚)に似ていることに由来するようですが,フタバガキ科植物は熱帯性のため日本には見られません。漢字表記の花梨は当て字です。

 香りの道では遠目に臨む山々が新緑に彩られ,道沿いでもカリン以外にハナカイドウやコバノミツバツツジが咲き誇っています。可愛らしい花と目に優しい新緑が迎えてくれるこの道を春風に吹かれながらゆったりとご散策ください。