トップ / 花・緑情報 > 森林植物園のいま(バックナンバー) /

花・緑情報

木々の冬芽・葉痕3〜クロモジ〜

2017.01.20 更新








 今日1月20日は二十四節気の大寒にあたります。一年中で一番寒い頃で,寒稽古などの耐寒行事とともに,寒気を利用して酒や味噌などを仕込む寒仕込みも行われます。事実寒波がやってきているようで,森林植物園でも小雪が舞う冬日です。今年は比較的出現が少ない「シモバシラ」の氷柱も見られました。(写真1)こうした寒さから花や葉を守るための植物の工夫が冬芽です。今日は早春に花をつけるクロモジの冬芽をご紹介します。

 クロモジはクスノキ科クスノキ属の落葉低木で,北海道南部から九州の山地に自生し,海外では中国にも分布しています。(写真2)

 クロモジといえば高級和菓子に使われる楊枝の代名詞になっていますが,これは「枝に芳香があること,そして楊枝に残される樹皮に黒い紋様があることにより,嗅覚・視覚を通して和菓子の味を引き立てる」というのが理由のようです。また軽く柔らかで加工しやすいという点jでも加工材料に適しています。そのため他の細工物にも利用されています。なおクロモジの枝や葉を蒸留すると黒文字油という精油がとれますが,これが芳香の元で,かつては香料として利用されていました。

 この冬芽は紡錘形の葉芽と丸っこい形の花芽が一緒になっていて,人がバンザイをしているような可愛らしい形になっています。(写真3)この芽からは3月半ばから終わり頃にかけて花と葉がほぼ同時期に芽吹きます。(写真4・5=2016/3/22撮影

 冬芽をいくつか見比べてみると,多くは葉芽一つに対して花芽が二つのバンザイ型ですが,中には花芽が一つや三つのものも見られます。(写真6)ただこの数は開花とはあまり関係がないようです。

 クロモジの名前は黄緑の小枝に地衣類が付着した黒班が見られることがあり,(写真7)それを文字に見立ててクロモジと名付けたという説が一般的です。また昔宮中に使える女房たちの間で,物の名前に「もじ」をつけるのが上品とされていて,黒楊枝に「もじ」をつけてクロモジになったという説もあります。

 クロモジは園内各所でその可愛らしい冬芽をご覧いただけます。数多くご覧になりたい方は,長谷池から山田道に向かう道にあるトチノキ林近辺にお越しください。