薬樹園に咲く花〜ヤツデ・ビワ〜
2016.12.09 更新
薬樹園はその名前が示すように薬用植物が集められたところですが,その実を求めて野鳥も飛来してきます。秋の一時期,ゴシュユの実を食べにやってきた旅鳥のムギマキがバードウオッチングの方々に人気になっていました。今はひっそりと静まりかえるその一画にヤツデの花が咲いています。(写真1)
ヤツデはウコギ科ヤツデ属の常緑低木で,関東南部以西に分布する日本原産の暖地性植物です。Fatsia japonicaの学名も日本特産種であることを表しています。
茎の先端に円錐形の花序を伸ばし,球形の多数の花をつけます。(写真2)一つ一つの花は,花弁が5枚で反り返っており,5本のオシベが見えます。(写真3)この花には雄性期と雌性期があり,花弁のあるこの時期は雄性期です。この後花弁とオシベが落ちて,メシベの柱頭が伸びて雌性期を迎えます。
ヤツデを特徴づけているのはその大きな葉で,名前の語源も葉が掌状に裂けている(八手)ことに由来しています。ただ裂ける数は8とは限らず,実際には9裂しているものがほとんどです。(写真4)8という数は末広がり(八)につながるということで,縁起をかついだことによるようです。
もう一種,薬樹園で花を咲かせているのがビワです。(写真5)果実として実はよく知られていますが,花はご存じでない方も多いと思います。
バラ科ビワ属の常緑高木で古くから果樹として利用されてきました。原産地は中国南西部とされていますが,本邦の古い文献にもその名が見られるため,古代から日本にあったことは確かなようです。
花はバラ科植物らしい5弁の花弁を持つ可愛らしい花です。(写真6)それほど目立つ花ではありませんが,近づくとほのかな香りが漂います。
果樹として知られるほか,その分厚く青々とした葉(写真7)が生薬の枇杷葉として古くから利用されています。あせも治療や咳止めそして胃腸病などへの薬効のほか,ガン治療薬としても利用されています。
ビワの語源は楽器の琵琶(びわ)に実の形が似ていることに由来するようです。
薬樹園ではこれらの花のほか,ロウヤガキの可愛らしい実,ナンテンの赤い実など様々な実りもご覧いただけます。花と合わせてお楽しみください。