水辺の花〜アサザ〜
2016.07.28 更新
暑い日が続いています。まさに「暑中」という言葉がぴったりとくる日々です。そんな水辺が恋しくなる日に,涼風が渡る長谷池に咲く花,アサザをご紹介します。(写真1・2)
アサザはミツガシワ科アサザ属の多年草で,ユーラシア大陸の温帯地域や北アメリカに分布し,日本では本州や四国,九州に見られます。
スイレンに似た切れ込みのある浮葉をつけますが,スイレンよりはずっと小さく,近くにあっても混同することはありません。(写真3=大きい葉はスイレン 小さい葉はアサザ)この若葉は食用にされることもあるようです。
夏から秋にかけて黄色い花を咲かせますが,ちょっとキュウリに似た可愛らしい花です。(写真4)5弁の花は根元でつながっている合弁花です。そして遠目では分かりにくいかもしれませんが,葉の周りにフリルのように細かい切れ込みが入っています。(写真5)
アサザは「異型花柱性」という特有の繁殖方法を持っています。それはメシベがオシベより長い「長花柱花」とその反対の「短花柱花」があり,その異なる花型の間で花粉のやりとりがされた場合のみ種子ができるというものです。写真6のものはメシベが短い「短花柱花」で,全てを調べた訳ではありませんが,確認できる限り本園のものはこのタイプです。もっとも種子はできなくても地下茎を伸ばして成長しますので,本園の繁殖に影響するわけではありません。
水路や小川,池などに生育しますが,護岸工事や水質の低下などにより,各地で個体群が消滅したり縮小したりしています。そのため環境省のレッドリスト「準絶滅危惧種」に登録されています。
アサザは漢字では浅沙と書きます。それは浅い所に咲くことからきているというのが通説です。ただ朝早く咲く「朝咲」からきたという別説もあります。たしかにこのアサザは午後には花を閉じてしまします。(写真7=午後2時撮影)また雨の日はもちろん,雲が多い日など天気が悪い日には花を開きません。そんな少し気難しい面もありますが,夏の太陽がよく似合う可愛らしい花を,天気がよい午前中を選んでご鑑賞ください。