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花・緑情報

ケンポナシ

2016.07.19 更新







 昨日近畿地方の梅雨明けが発表されました。いよいよ本格的な夏の到来です。

  さて,先にご紹介したナツツバキは,一日花のため次々と落花します。それでも今年は花付きがよく,落花する分新しいつぼみが開花し,長く見頃が続いていました。そのナツツバキ林のすぐ近くに見上げるような高木があり,今可愛らしい花を咲かせています。それがケンポナシです。(写真1)

 ナシという名前がつけられていますがバラ科植物であるナシ(梨)とは近縁ではなく,クロウメモドキ科ケンポナシ属に分類される落葉高木です。

 日本では北海道の一部そして本州から九州にかけての山野に自生しますが,朝鮮半島や中国など東アジア温帯地域一帯にも分布しています。

 枝先に集散花序を出し,淡い緑を帯びた白っぽい花を咲かせます。(写真2)この花は5弁花でオシベも5本です。オシベ・メシベを備えた両性花ですが,この花は雄性先熟つまりオシベが花粉を出している間,メシベはまだ成熟しておらず,(写真3=雄性期の花)オシベが役割を終えて萎れてから花柱の先が3裂して受粉を待ちます。(写真4=雌性期の花)これは自家受粉を防ぐための仕組みです。

 ケンポナシがナシの名前を持つのはその果実に由来しています。(写真5)といっても果実自体は小さく,果肉もほとんどありません。ナシの名前の由来となっている食べられる部分はその果実の根元の枝の部分(果柄)で,その部分が肥厚して食べられるようになります。それはナシに似た香りと味を持ち名前の由来となっています。この部分を乾燥させたものは「キグシ」と呼ばれる生薬で,二日酔いなどに効くとされています。

 枝を食べる変わった樹木ケンポナシは,園路からナツツバキ林に下りる階段の途中にあります。ただ高い木ですので樹下からはなかなか花は見られません。園路に向かってつき出している枝についている花を園路からご鑑賞ください。