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花・緑情報

森を彩る花〜ネムノキ〜

2016.07.15 更新








 半月ほど前,森を白く染め上げていたのはクマノミズキでしたが,今はネムノキのピンクが彩っています。(写真1・2)

 ネムノキはマメ科ネムノキ属の落葉高木で,日本では本州から沖縄にかけて,海の向こうでは朝鮮半島から中国南部そして中東まで広く分布しています。荒れた土地などに真っ先に侵入するパイオニア植物の一つで,野山や雑木林などでもよく見られる植物です。

 枝先に頭状花序を出し特緒的な美しい花をつけます。その花はふわふわとした毛のような姿が印象的です。(写真3)この毛のような部分はオシベの花糸で,葯は小さいため目立ちませんが,拡大してみると黄色が美しくホタルが飛んでいるようです。(写真4)オシベのかたまりの中にメシベも混じっており,これも拡大して見ると白くオシベよりも少し長い花柱があるのが分かります。(写真5)

 一つの花には30本余りのオシベがあり,それが10〜20個集まって一つの花序を形づくっています。一つ一つの花には目立ちませんが花弁もついています。(写真6)茎との付け根にはガク片もついています。

 葉は羽状の複葉でオジギソウとよく似ていて,つい撫でたくなります。(写真7)たしかにネムノキとオジギソウは同じネムノキ亜科に属し,比較的近い種ではあります。しかしネムノキの葉は接触による刺激で閉じることはありません。その代わりに夜になると葉を閉じる「就眠運動」を行います。これは主な花粉の媒介者であるスズメガが花を見つけやすいようにするためといわれています。ネムノキの名前もこの就眠運動に由来しており,「眠りの木」「眠た木」などが訛ったものです。

 漢字では合歓と書きますが,中国名であるこの文字も就眠運動に由来しており,葉が合わさることから夫婦円満の象徴として名付けられたものです。それを万葉集ではこのように詠んでいます。「昼は咲き 夜は恋ひ寝る 合歓木(ねぶ)の花 君のみ見めや 戯奴(わけ)さへにみよ」(紀郎女)

 ネムノキは園内各所でご覧いただけます。薬樹園,北アメリカ区,香りの道で,そして見上げるような大木,眼前で花を見られる木など様々な場所で様々なネムノキをお楽しみください。