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花・緑情報

あじさい坂(ヒメアジサイ)見頃〜あじさい通信2016その5〜

2016.06.23 更新







 梅雨空が続く中であじさい坂のヒメアジサイが順調に色付き見頃を迎えています。(写真1・2)

 ヒメアジサイは手まり咲きの美しいアジサイで,信州の雪深い地方で古くから栽培されていたそうです。このアジサイを世に知らしめたのは植物学者牧野富太郎博士で,このアジサイがガクアジサイの手まり咲き,いわゆるホンアジサイとは違うことに気づきヒメアジサイと命名して発表しました。「ヒメ」はその優美な姿をお姫様に例えたものです。

 花はほとんどが装飾花で構成されています。ごくわずかではありますが装飾花に隠れるように両性花がついていることもあります。(写真3)

 少し前,エゾアジサイの手まり咲きをご紹介しましたが,(写真4)この種とヒメアジサイは形態的に非常によく似ています。ただエゾアジサイのほうは冬の乾いた寒風に弱く,都会での栽培が難しいため同一種とはいえないとされています。ただヒメアジサイの澄んだ青にはエゾアジサイが関わっているといわれています。ヒメアジサイは古い種であるためその来歴が定かではありませんが,エゾアジサイとホンアジサイの交雑種であると推定されています。

 花の咲き始めは葉緑素があるため緑がかった白ですが,(写真5)次第に色素(アントシアニン)の働きで青が濃くなってきます。ただ土壌その他の影響で色は変わってきます。この青が美しい花もヨーロッパでは「ロゼア」つまりローズ色と名付けられており,赤系統の花とされています。

 花柄が順に枝分かれし,手まり状の花序が重なることで構成されているヒメアジサイの中にはハート型に見えるものがあります。(写真6)これは偶然の産物ですので,それほど数多く見られるものではありません。お友達同士で,ご家族でご来園の方はきれいなハートを見つけて共通の話題になさってください。

 梅雨空が続きますが,こんな空こそがヒメアジサイに似合う空です。咲き誇る初夏の風情を存分にお楽しみください。