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花・緑情報

シナノキ

2016.06.22 更新







 昨日の青空はひと時で,今日は湿気をはらんだ空気に包まれた梅雨空が広がっています。そんな鉛色の空の下,西門付近でシナノキが淡黄色の花を咲かせ始めています。(写真1・2)

 シナノキはアオイ科シナノキ属の落葉高木で,北海道から九州までの山地に自生する日本固有種の樹木です。

 この仲間は北半球に30種ほど分布しており,多くは「〜ボダイジュ」という名前で呼ばれています。そしてシナノキも含めて少し歪んだような特有の心形の葉をつけます。(写真3)

 葉の腋に集散花序を出し,花柄が分かれて下向きに花をつけます。花は5枚の花弁と同数のガク片を持ち,たくさんあるオシベがよく目立つ両性花です。(写真4)この花は芳香を持ち,香り高く良質なハチミツの蜜源としても知られています。

 この木の樹皮は繊維が強く,合成繊維のロープが普及する前は船舶用のロープとして使われていました。シナノキの名前はアイヌ語で「結ぶ」を意味するシナからきているといわれます。ちなみに長野県の旧国名である信濃は,古くは科野と書き,この木を多く産したことが名前の由来ともいわれています。

 シナノキの仲間であるマンシュウボダイジュも黄色みがかった花を咲かせています。(写真5)中国を原産地としていますが,ごく一部ではありますが日本にも自生しています。この仲間に特徴的な心形の葉を持っていますが,シナノキを何回りも大きくしたような大きな葉です。(写真6)

 ボダイジュはお釈迦様がその木の下で悟りを開いたことで知られ,仏教の聖木の一つですが,別名ピッパラジュと呼ばれるこの木は熱帯地方に育つクワ科のインドボダイジュのことでシナノキの仲間ではありません。

 花盛りのシナノキの樹下に行くとほのかな香気が漂ってきます。花とともに香りもお楽しみください。