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花・緑情報

あじさい通信2016その3〜ヤマアジサイとその仲間〜

2016.06.17 更新








 昨日以来の雨もすっかり腫れ上がり,雨に洗われたヒメアジサイの六甲ブルーが一段と鮮やかです。(写真1)

 先日ヤマアジサイの仲間であるシチダンカやクロヒメアジサイについてお伝えしましたが,今日はあじさい園でご覧いただけるほかのヤマアジサイ系アジサイをご紹介します。

 日本列島にはヤマアジサイ・エゾアジサイ・ガクアジサイという類似した形質の3種類が住み分けており,この内最も小型で変異性に富み,あじさい園で見られるアジサイで多数を占める種の基本種がヤマアジサイです。(写真2)

 関東・東海以西の本州から屋久島までと朝鮮半島南部に分布し,沢筋の斜面地などに自生します。そのためサワアジサイの別名があります。

 本園で見られるヤマアジサイは青花ですが,これは同種の中でも西日本型に分類されるもので,東日本型といわれる白花の集団もあります。それを母種とするのがベニガクです。(写真3)幅広で鋸歯(きょし=のこぎりの刃状の細かい切れ込み)のある装飾花が特徴です。この花の魅力はそれだけでなく,白から真紅に変化していくことで,(写真4)それがベニガク(紅額)という名前の由来になっています。

 ベニガク同様東日本型の白花を母種とするのがキヨスミサワアジサイです。(写真5)装飾花の赤い縁取りが可愛らしい花で,キヨスミは発見地である房総半島南部の清澄山に由来しています。

 花祭り(灌仏会)の時にお釈迦様の小像にかけるお茶である甘茶の原料となるアマチャも花をつけています。(写真6)淡い青の装飾花の先がやや尖り気味なのが特徴ですが,甘茶はこの葉を発酵・乾燥させ抽出したものです。アマチャヅルというつる性植物でつくられたものもありますが,本来はアマチャからつくられたものです。その近くにアマギアマチャも咲いています。幅が狭い白花の装飾花が特徴で(写真7)伊豆半島の天城峠周辺に自生するため,この名がつけられています。

 あじさい園ではヤマアジサイ系以外にもエゾアジサイの仲間もご覧いただけます。またシチダンカもまだ見頃が続いています。あじさい散策の折にはぜひごお立ち寄りください。