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花・緑情報

あじさいの季節〜ツルアジサイ・コガクウツギ〜

2016.05.22 更新









 五月も終盤に近づき,緑も深まりすっかり初夏になりました。本園でもまだつつじ・しゃくなげは見られますが,カルミアや西洋シャクナゲなど外国産のものになっています。そろそろ主役はあじさいに移ろうとしています。今日はヒメアジサイなどの手まり咲きあじさいに先駆けて咲き始めたツルアジサイとコガクウツギをご紹介します。(写真1・2)

 ツルアジサイはアジサイ科アジサイ属の落葉つる性植物で,北海道から九州にかけて分布し,山地の岩崖や広葉樹林の林縁に生育します。

 花は少しクリーム色がかった白い両性花(オシベ・メシベを備えた花)の周囲を装飾花(飾りの花)が縁取っています。(写真3)両性花の花弁は開かないまま開花直後には落ち,オシベが目だっています。(写真4)この両性花は甘い香りを持っており,園路にもその香りを漂わせています。装飾花は白い4弁の花弁状ガク片をもっています。(写真5)

 フジと同じように木本のつる性植物で,幹や枝から気根を出して木などに付着し,絡みつきながら上に伸びていきます。本園あじさい園のツルアジサイも,コナラの木に絡みついて10m以上に伸びていますが,本体のコナラが枯れたため,コナラに支えをつけてツルアジサイを保たせています。(写真6

 ツルアジサイの名前はつる性であることに由来しています。別名はゴトウヅルといわれますが,漢字では梧桐蔓で梧桐はアオギリのことです。これは花が似ているからという説もありますが,確かなつながりは定かではありません。

 もう一つのアジサイはコガクウツギです。名前は「ウツギ」ですがアジサイ科アジサイ属の落葉低木です。これはノリウツギなども同様です。本州の東海以西から九州にかけて分布し,六甲山系にも多数見られ,主に湿った谷筋に自生しています。

 花は3〜5弁の装飾花が散りばめられた花序に,5枚の花弁を持つ両性花がついており,オシベは10本と3本のメシベを持っています。(写真7)この両性花は特有の香りを持っています。装飾花もオシベ・メシベらしきものを持っていますが,痕跡化しており実を結ぶことはないようです。(写真8)

 コガクウツギ(小額空木)の名前は花の咲き方がガクアジサイに,木の姿がウツギに似ているガクウツギよりも葉や花が小さい事に由来しています。

 コガクウツギは園内各所でご覧いただけます。ほの暗い林内に浮かぶように咲く白い花の風情をお楽しみください。なおツルアジサイはあじさい園にありますが,園路からの方がご覧いただきやすいと思います。