カタクリ
2017.03.30 更新
「もののふの 八十乙女(やそおとめ)らが 汲みまがふ 寺井の上の堅香子(かたかご)の花」(大伴家持 万葉集)
昨日今日と穏やかで春らしい日が続いています。本格的な春の到来を思わせる日々です。この暖かさでロックガーデンやその周辺のカタクリが華やかに開花しました。(写真1)古語「堅香子」の名で万葉集にも詠まれているカタクリは,その可憐な花が歌人からも愛されてきました。
ユリ科カタクリ属の多年草で,10cmほどの花茎のに咲く薄紫の花はうつむくように下向きにつき,反り返った花被片が特徴的です。(写真2)オシベは6本ありますが,長短3本ずつで長く伸びた濃い紫の葯が薄紫の花被片によく映えています。(写真3)また葉には暗紫色の模様があり(写真4)つぼみが付いていなくても,この葉を見ればカタクリのものであることが分かります。
5月頃には葉が枯れ,次の年に葉を出すまで地下で休眠します。地上に姿を見せるのはわずか一か月と少しの短い期間で,ヨーロッパではこのような春の植物を「スプリング・エフェメラル」(春の儚い命)と呼んでいます。
カタクリはその名前が示すように片栗粉の原料として知られていますが,この鱗茎から精製されるデンプンの量はごくわずかであり,市販されている片栗粉はジャガイモやサツマイモからつくられています。カタクリ(片栗)の名前は,その鱗茎がクリのかたわれに似ていることに由来するそうです。
ロックガーデン以外では,つつじ園からしゃくなげ園に下りる階段横(写真5)でも多く見られます。中にはまだつぼみのものもあり,(写真6)今しばらくはお楽しみいただけるはずです。ただこのデリケートな花は,晴れて暖かな日でなければ花を閉じていたり開いていても反り返るまでは開かなかったりする場合があります。ぜひ天気のよい春らしい日を選んでこの可憐な花をご鑑賞ください。